香港での一年間の生活も終わり、日本に帰国。最後に、香港から行きやすい景勝地である桂林への旅行を検討してみた。
桂林は、大学時代、夏休みの終わりに友人が、あの瓢箪のような山々をバックに自転車でサイクリングする写真を見せてくれたことで知った。それまで身近に中国との接点がなかった私にとって、その図が中国のイメージの元型になっていた。。桂林という場所を私は、独りで喜んで行くほど魅力のある場所だと感じていたわけではなかった。しかし、その元型のイメージを体験しておきたいという想いがひそかにくすぶっていた。そして、香港にいる今を逃すと永遠に行かない気がしたので、検討開始。
しかし、調べてみると旧正月休みのこの時期は・・・
・ 寒い
・ 乾期の渇水のため川下りできる範囲が狭まる&霧や雲が出にくいため水墨画的景色は見にくい
・ 特別料金体制だし内地からの観光客が多い
と、タイミングとしては最悪だった。
行こうかどうか悩んだが、"飛び込みで夜行のバスチケットが取れたら行ってみる"というサイを投げることで決めることにし、とりあえず簡単な準備をして国境を越えた。
深圳から桂林
ネットで調べたところでは、国境の深圳駅付近のバス停の一つから250元くらいで夜行バスがあるという。場所がいまいち分からなかったのもあり、国境付近の旅行会社にまず行ってみると、350元とふっかけてくる。「春節だから」というが、信じられないので横着せずにバス発着所を探していく。バスのチケット売り場の手前に客引きがいて、700元とひどくふっかけてくる。飛行機で660元なのにばかなである。中国には法外にふっかける人は少ないという印象があったが、やはり流れ者の多い深圳は違う。
バスターミナルでは季節変動価格で260元なり。どのくらい滞在したいか分からなかったので、帰りのチケットは買わないでおいた。深圳駅周辺は特に旅客が多そうでも無かったので、旧正月期間でもなんとかなるだろう(結果的にはこれは甘い読みだった)。
降りる先は桂林ではなく、その少し(バスで1.5時間ほど)南にある、桂林川下りの到着地点である陽朔。ここは中国のバックパッカーの聖地の一つで、雲南旅行中に出会った中国横断中の旅行者に薦められていた場所。桂林の街中とは違い、桂林的景色に囲まれた街。過去に西洋人が多く住んでいたらしい場所でもあり、中国では珍しく英語の通用度が高い。
英語といえば、深圳からのバスガイドさんも英語をしゃべってちょっとびっくりした。
バスは土足禁止。寝台は雲南で乗ったものより横幅は広いが、長さは 180cmの私には足りず、足を折る必要があって、ぐっすりとはいかない。シーツは綺麗だった。そして、禁煙だったのがとても嬉しい。途中、福田バスターミナルに寄って行く。バスは高速を快調に飛ばし(この辺はインドと違うところだ)。しかし、快調すぎて朝7時着と言われていたのに、四時半に到着してしまった。周囲は真っ暗である。困った。去年、大理で朝3時半に着いて惨めな想いをしたことを思いをした。
この時間に空いている宿はあまりないし、ガイドブックも持たずにきたのでどこが安宿街なのかも分からない。しかし、今回は幸運にも客引きが一人いたし、他に二人のバックパッカーがいた。寒い中さまようのも嫌だったので、前者について行くことにした。宿はテレビに洗面セットとシャワーつきで交渉後100元。盛んに二泊しろと行ってきたのは相場より高いからだろう(一度街に出られると相場がばれる)。もっと安い宿があることは知っていたが、夜中に待っていた労力に大いに助けられたし、この後宿を探しに外に行くのは嫌だったので、一泊だけ、ということで早々に決める。
ちょっと寝たら朝の街を散歩してみようと思うも、目覚まし動かず。昨日の客引きがローカルビールとローカル麺を持ってきてくれた。彼は「朝にビールを飲むのがこの土地の習慣だ」といって薦めてくる。ほんまかいな。とにかく私は朝から飲む気がしないので、「インドでビールに睡眠薬を入れられてから、人から飲み物はもらわないことにした」と伝える。「気になるなら新品を持ってくるよ」とそれでも勧めてくるが断る(まあ、薬を警戒するならもらったご飯を食べるなという話なのだが)。
この朝食サービスは、ここで恩を売ってツアーを契約するための投資のようだった。ツアーの相場がおぼろげにしか分からないし、比較したいので自分で探すと正直なところを伝える。しかし、「今は旧正月だから見つかりにくい」「熊本から来ている美人二人と一緒にまわれるよ」などととてもしつこく勧誘してくる(そういえばビール勧誘の時も、熊本ガールも今ビールを飲んでいるとか言っていた。結局その二人の姿を見掛けもしなかった。彼の日本人勧誘時の常套勧誘手段なのかもしれない。)。しかし、値段もまあそんなもんだろうというところ(英語ガイド&ランチ付き1日サイクリングツアー+川くだり1日で350元)に落ちてきたし、自分で探しに行って当日乗れるツアーが見つからないリスクを考慮してお願いした(旧正月パワーがどんなものか分からなかったので)。
朝、ガイドさんがくるまでの間、街を少し散歩した。宿を出ると、"あの"桂林的な山が街の中や周囲ににょきにょきと生えていて、最初に見た時にはやはり少し感激した。
1日目 サイクリング ~
1日目は、天気が非常によかったので、ハイライトの川くだりではなくサイクリングからスタート。さっそく来てくれた、英語がそれほどうまくなく言葉少ないガイドさんと田舎をまわる。ガイドはたいした説明はしてくれなかったが、地図も持っていない身としては、ガイドがいてよかったと思う。治安のいまいちな場所もあるらしいし、独りで迷っている旅人もいた。
田舎は、中国の普通の田舎の風景である。野生や家畜の鳥がそこらへんにいて、ちょっと鳥インフルエンザの心配もしつつであった(桂林周辺は人間への感染はないが、省としては死亡例がある)。おかしな形の山々と川とを見てまわる。このコースでは途中、筏で川下りをするのが定番らしい。これはびっくりの150元。特別な景色が見られるわけでもないので、やめて、サイクリングで自分のペースでまわる。でも、道中、川原にいた地元のお爺さんに筏を貸してもらってこいで遊んで、気分だけ味わった。
途中で「昼食は込みなの?」と聴かれたので「そうだよ」と答えたら、ローカルの中でも一番安いだろう場所に連れて行かれた。市場で野菜や肉に囲まれながら、おかず3品&ごはんを食べたのだった。大変露骨な経費節約であったが、おいしいのはおいしかった。
その後、ちょっとした山(月亮山)に登ったり、洞窟(ウォーターケーブ)に入ったり。ガイドさんは入り口で待っていた。この辺りは特にコースが決まっているわけではなく、何をしたいか聞かれながらやっていく感じ。洞窟の入場料は168元もする。去年、世界一長い地底川の洞窟に行ったし、雲南で有名な洞窟にも行ったので興味なかったが、ガイドの妹がチケット売り場で働いており、ローカルプライス(80元)でいいから・・・と言ってくるので、時間潰しに行ってみた。
実際、郊外巡りはいろいろ見所に入っていかないと、山を眺めるだけでは1日使いきるのは難しい。私は中国の寺などは相当に飽きていたし、中国で乗る気球は怖いし。洞窟でも・・・と消極的選択。
この洞窟へは、舟で入って中で歩く。定番の鍾乳洞たちを見る。まずまずといったところ。予想通り、驚く場面はなかった。思っていたよりは規模が大きかったが、雲南の九郷風景名勝区とは比べるまでもない。一人の若い中国人が、現地ガイドの言うことを気が向くと英語に翻訳してくれて助かった。
夕方にはサイクリングが終わり、街に帰って、中国では珍しいバックパッカーのたまり場的な場所に行ってみた。それは、予想よりも大きい規模だった。もっと旅人に有名なコルカタのサダルストリートなんかより大きくちょっとしたオドロキ。西洋のレストランがあり、バーがあり、英語のメニューや看板があり。ずらりと並ぶみやげ物(偽ブランドや おかしな T シャツやら)屋を冷やかすだけでも時間をかなり潰すことができる。
予定通り明日の夜行バスで帰ろうと、バス停に行くと「明日は満席」。さすが旧正月である。旅行代理店をいくつかまわり、ようやく明日の夜行バスを見つけることができた。価格は特別料金の350元。まあしょうがない。
スケールの大きな野外ショー
さて、この街で有名なショーがあって、夜にはそれを見に行こうとしていた。張芸謀(チャン・イーモウ)プロデュースの 印象劉三姐 というものだ。夜に、山々をバックに街の外れの川の上で繰り広げられるショーである。出演は総勢600人にも及ぶという、日本では見ることができないようなものである。
チケットは一番安いもので188元もするし、まあいつでもチケットは買える、と思っていたがそこは旧正月パワー。その日の第一公演は売り切れ。第二公演に滑り込む。ショーの開催地まではチケットを買った旅行代理店のバスで行く(ちなみに帰りは置いていかれた・・・)。
会場の規模がものすごい。人々が待つスペースがあり、そこに開演1時間近く前に集合。そこから席まで大移動(どちらも屋外)。開場から開演までが短すぎ、客が入場中に真っ暗になって大パニックになっていた。ステージの前には川。その奥に山々がライトアップされる。
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