2008年12月8日月曜日

インド: アーグラー

・ アーグラー行きの最新鋭電車
さすがインド最速?電車。スピードは結構出ている。たった2時間ばかしの道中で水、お茶、新聞、軽食、朝食、と次から次へとサービスが続き、飛行機のよう。しかし、インド旅行が終わった今思うと、この電車の一番すごかったところは始発とはいえほぼ定刻に出て、しかも 30分(+25%)しか遅れなかったことか。

・ 世界遺産週間
デリー2日目、とある世界遺産に入ろうとしたが、チケットオフィスが閉まっている。

その日からインドは世界遺産週間というキャンペーンをはっておりで、入場料が不要だといわれる。
なんとラッキーな時期に旅行組んだんだろう、とルンルンで次の日に行ったタージマハール(外国人入場料入場料 750Rp を誇る)に行くと、チケット売り場が普通に稼動している。
実はこれ、世界遺産"週間"なのに入場料が無料なのは初日だけという、C○T○BANKの広告的な仕様だったのだ。
初日後の6日はいったい普通の日と何が違うのか、結局どこに行っても分からなかった。 リクシャーの運転手との「お前はラッキーだよ」「何を言いたいか知ってる!」という会話も2日目の朝で終了。

主に見たところ(星は5点満点オススメ度)

・ タージマハール ★★★★★
タージマハールでは外国人料金を払うと、ミネラルウォーターと建物の上で靴を脱がなくて済む靴カバーが付属する。余計なお世話である。靴カバーはいらないと言うと「ただなのになんでだよ」「ゴミになるから。裸足でいい」と返しても「いや、汚れるよ、お金とらないよ」としばらく追いかけられた。

さて、肝心のタージマハールであるが、最初に門の向こうに見えるときには「おお、散々写真やテレビで見てきたあれだ!」という感激がある。大きく均整の取れた建物は世界一美しい建物の一つと言われるだけあると感じた。
が、意外と近づくに連れてつまらなくなる。近くに行くと、ついつい細部の装飾などの作りを個別判定をしたくなってしまう。しかし、そのどれも過去に見てきた遺跡に対して独り勝ちをするわけではない。それで、期待が大きすぎただけに少しがっかりする。とはいえ、庭園含めてトータルで見て素晴らしい場所であることには相違ない。

というのが当時の感想だが、写真を見返すとやはり極めて美しいなあ・・・。
世界一絵になる建物の一つであることには相違なさそうだ。

・ アーグラー城 ★★★
ここにタージマハールの後に行くのはよくない。
大規模(半分は軍の施設なので見ることができないのが残念であるが)と建物の美しさ、内部装飾、遠くに見えるタージマハール、と悪くない要素がそろってはいるのだが、タージマハールの後ではなんだか印象に残りませんわ。
アーグラーでは最初にここに来て、タージに想いを馳せてから移動するのが吉。

・ ファテーブル・スィークリー ★★★★
アーグラーのバス停からバスで1時間ちょいかかるが、他の見所を打ち捨てて行った甲斐があったと思う。期待よりもよかった。

ローカルバスの終着点からはその立派な門が見え、期待が高まる。しかし、行き方がいまいち分からない。適当に歩んで行ったら迷った。そうしたら、地元の自称学生(以降ネタバレながら"偽学生"と呼ぶ)が案内してくれた。彼は「今、ハイスクールの学生で英語の勉強をしたいから、お金は取らないからガイドをさせて」という。絶対違うと分かっていながら、ガイドがあってもよいと思ったので追い払わない。
歴史ある街にありがちな見渡しの聞きにくい細い路地が続くので、おかしなところに連れ込まれていないかを確認しつつ、彼についてゆくと、無事に門にたどり着いた。

素晴らしかったのは無料のモスク地区の方だった。高台にそびえる巨大なブランド門と壁面の透かし彫りの精巧さ。タージマハールほど人もいないし、周囲の田園風景に溶け込んでいく周辺部で過去の都に想いを馳せつつぼんやりするのにもよい。

モスク地区を案内してくれた偽学生によると、ここからアーグラー城まで 40kmにも及ぶ地下通路があり、しかもその大きさは馬車が通れるという信じがたい話(しかし彼は 2km地点までは行ったことがあると言っ ていた)や、ひんやりした風が送られてくる天然のエアコンの場所や、たたくと周囲に音が響く壁など、一人で見ていては分からない面白いことを色々と教えてくれた。

象の鎮魂のために立てられた、多数の象牙が刺さった塔なども面白かった。
その辺りで、インドの子供たちの遠足集団に合う。数人が寄ってきて、私と写真を撮りたがると、全員がわっと寄ってきて混沌状態に。とりあえず全部の写真を取り終えて退散しかけたところで偽学生が子供の数人になんか言ったら「キャー」って女子学生たちが寄ってきて腕を組んできたりして、ちょっと困ったなという素振りをしつつ悪くない気分になっている自分に困った。
どうやら偽学生は「この人は日本の映画スターなんだよ」と言ったらしい。

偽学生は「ねえフレンド、もうこれでファテーブル・スィークリーは終わり。帰ろう。チップはいつも150〜200Rpくらいもらっているんだ」とか訳の分からないことを抜かす。

T「(聞こえなかったふり)あ、ところで、年は幾つなの」
偽「20歳」

インドでハイスクール生徒といえば日本の高校生より若いはずだ。彼は嘘に整合性をもたせようという努力はしないらしい。
最初から「自分は資格はないけれどガイドができるから、気に入った範囲でお金をくれればいいからやらせてくれ」と言ってくれれば、それなりに敬意を払えたが、下手な嘘と押し付けがましさがちょっと残念だった。

チップは少しはあげるとして、有料ゆえに目玉と思われる宮廷地区を見ずにここは去れない。宮廷地区も見ていくよ、というと

偽「あそこはアーグラー城と同じだからつまらない。お金の無駄だよ。それにもう16:30で終バス。逃したらアーグラーに帰るのにタクシーで700Rpかかるよ」
T(16:30とは、今が16時なのを見越して作り上げそうな時間だ)「いや、降りた時に地元民に帰りのバスは 18時まではあることを確認したし、ガイドブックにももうちょい遅くま であると書いてあるよ」
偽「ねえ、フレンドである俺とその人のどっちの話が信じられると思っているの?」
答えは決まっているだろうよ。
まず、フレンドじゃないし。

T「せっかくここまで来たから見ていくよ。帰りはタクシーでもいいや。」
とさよならすると、宮廷地区の入り口で認定ガイドや窓口でバスの時間を聴く。情報はばらばらだったけれど、18時くらいまではありそうだったので入ることに。
認定ガイド(この人の話は後述)の話によると、偽学生は「認定」でないので有料地区は入ることができないそうで、それでもう私を帰らせようとしていたのだった。偽学生には見合うだろうチップを払って、入場する。

有料地区の宮廷地区もそれなりに広く、装飾や作りも立派なものであった。少しネパールのカトマンドゥ周辺を思い出させる感じの造りであった。(ガイドがあったらもっと楽しめたかもしれないが、まともなガイドが見あたらなかった)。

・ ファテーブル・スィークリーからの帰り道
見終えるともう夕暮れ。外国人観光客はもう見当たらなくなっていた。

17時頃に街に降りて、バスを待っていると、宿で働く数人の客引き青年がやってきた。「ごめん、もう宿はアーグラーで取ってあってバスで帰るからまた今度きたら泊まるよ」と言って追い払おうと思ったが、暇らしく色々はなしかけてきて写真を撮ったり撮らせたり、私の腕時計をはめさせろと言って来たり(彼は宿の名刺もくれていたし「信用しろ」というのに賭けてはめさせてあげた)、と戯れながらバスを待っていると、偽学生がまたやってきて挨拶をしてくる。「16:30が終バスだよ」と言ったこと、覚えているのかな・・・。

17時と17:30には来るというバスは両方来ない。もしかしてバスはもうなくて「バスはないからうちの宿に泊まれ」という展開?と疑いつつあった。
彼らは「来ないね。立ちっぱなしもつらいだろうからお茶でも飲んで待てば」といって、バスを見逃さない場所にあるチャイ屋に連れて行ってくれた。チャイに変な混ぜものしていないかなど過程を凝視しつつ、注文したチャイを飲んで待つ。ちょっと座ると彼らはもう帰らないと、と行ってしまった。彼らは悪い人ではなかったと少しほっとした。

しかしバスは本当に来るのか?
チャイ屋の主人曰く「18時には最終が来る」と言うが、来ない。

「バスはよく遅れるし、よく来ないんだよね。バスも色々と大変なんだよ。」などと彼はのんびりしているが、もう周囲は暗い。

18時を過ぎると彼は「もうバスは来ないね」と不穏なことを言う。
T「え、また遅れているだけじゃないの?」
チャイおやじ「impossible!」

・・・なんだか今日はだめらしい。

しかし、当然 700Rp のぼったぐりリクシャーなんて乗る必要は無い。
チャイ屋の主人の勧めにより、乗り合いオートリクシャー(2Rp)でバイパスまで出てそこでアーグラーに向うミニバス(20Rp)に途中乗車。周囲の人は協力的ですんなり。最初からこうしていればよかった。ミニバスの中はマリファナのと思われる煙に満ちていた。そして、誰かのやぎが通路をふさいでいて、そのせいで奥に行けない人がいて混乱気味。私も頑張って奥に進むも、すれ違うときにそのやぎに足舐められた。やぎは揺れるバスに疲れたのか、持ち主でない乗客の足に頭を乗っけたりしていたが、置かれている方は気にする様子も無い。

バスはやがてアーグラーに着いたが、期待していたバス停と違う。

困ったなと思っていると、すぐに乗客が「どこに行きたいのか」と聴いてくれた。その場所を告げると、ああそこなら「トゥクトゥクで 5Rp」と。リクシャーで 5Rpは現地料金としても安すぎると思ったが、それを材料に数人と交渉すると 30 以下にはならない。5Rp では鼻で笑われる。あれ、やっぱり。。。と困っているとバスの乗客が戻ってきて ついて来い という。どうやらトゥクトゥクというのは乗り合いリクシャーのことだったようだ。なるほど。そこそこの距離を乗りあって、ようやく目的地に。
慣れない街の夜なので降りる場所も独りでは分からなかった。この道中はたくさんの人に親切を受けて嬉しかった。

向こうから声をかけてくるインド人でも親切な人はいるんだなあ・・・と、この旅で最初で最後?に思った。

夜行を待つために取った宿に戻ってご飯を食べ、シャワーなどを浴びる。

夜行は 23:30 発。夜は危ないのでと、駅までは5分ほどだが、宿の人が一緒にリクシャーに乗ってきてくれた。ありがたい。

「アーグラーではタージマハールが汚れないように工場が強制閉鎖されたりして、職を失った人がマフィア化し、観光客の危険度は北インドでも最悪だ」という話をデリーでは聞かされていた。まあ、この話は「だからうちのツアーに乗れ」と続いたのでどこまで真実かは分からないが。

しかし、むしろインド人の優しさに触れて平和な気分になったアーグラーであった。

アーグラーで出会った人達

観光地のガイドは、誰かのガイド終了後に自分への推薦状を書いてもらい、他の観光客を勧誘する時に活用しようとする。アーグラーではこの傾向が強く、リクシャーの運転手もガイドもこぞって日本語で書かれた自称「日本人の友達がくれた手紙」を見せてくた。

・ アーグラーで出会った人1 「自分のひどさを証明するリクシャー」
駅からバス停への移動をお願いしたリクシャーワーラー運転手。「ねえ、僕はいい人だからこの後も一緒に観光地まわろうよ。ほら、日本の友達もたくさんいて手紙をくれるんだよ」といって見せてくれたそこには
「この人は金に汚い。まあ、並みのインド人ということだけれど。地球の歩き方に書いてあるようなトラブルに巻き込まれたくなければ"非"○○さん(彼の名前)をお勧めします」
というようなことが書いてあった。
最初から「バス停に直行してそこで終わりにしなければお金を払うつもりはない」といい続けたので、特に何も起こらなかった。

・ アーグラーで出会った人2 「自分のひどさを証明する認定ガイド」
ファテーブル・スィークリーの宮廷地区入り口にいた認定ガイド。「ねえ、僕はいいガイドだから雇ってよ。200Rp、いや150Rpでいいよ。ほら、日本の友達もたくさんいて手紙をくれるんだよ」といって、数日前の日付と日本人女性の名前の入ったそれを私に見せる。そこには、
「ガイドは100Rpといっていたのに450Rp請求された(数字部分は漢字で書いてある)」
「土産物屋に連れ回された」
「"このあとやろう"と言われた」
とか、悪いことしか書いていなかった。

もちろん断って、独りで中をまわる。出てきたところ、また彼が近づいて来る。そして、この推薦状、なんて書いてあるか全訳してくれないかとお願いされた。
この推薦状で客が取れたことがないので、きっと内容を疑っているのだろう。被害者を増やさないよう、この推薦状は是非このまま使い続けて欲しいので、「フレンドリーでいいガイドだと言っているよ」と適当に言う。しかしそれで済むほど文章は短くなく、彼は「全部訳して」と言う。やる義理もないのだが、適当な文章を作って聴かせた。

それは彼を傷つけないようにと、被害者を減らすためと思って自然にやったが、それは間違いだったかもしれないと後で思った。

彼はおそらく、ガイドされる人が何を嫌と感じるのかに気づいていない。もしも、気づいていれば、彼女に推薦状を書いてもらうのは間違いだと知っているはずだろう。長期的で前向きな私の対応は、中身を全部正直に訳して、「少なくとも日本人の価値観でこれらは喜ばれないからやめたほうがよい」と説教たれることだったかもしれなかった。

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